棚卸資産は貸借対照表を見ていれば、ほぼすべて企業で項目が存在しています。
イメージはできているけど詳しい分類、表示のルールについて改めて確認してみると発見があるかもしれません。
デリバティブは馴染みがないものですが、ここで一緒に記事にしたいと思います。
デリバティブ
デリバティブの評価
デリバティブ取引(先物取引、オプション取引、スワップ取引など)によって生じる正味の債権及び債務は、時価をもって貸借対照表価額とし、原則として、評価差額はヘッジに係るものを除き、当期の損益として処理します。
ヘッジ会計
ヘッジ取引
ヘッジ取引とは、ヘッジ対象の資産または負債に係る相場変動を相殺する等により、ヘッジ対象の資産または負債の価格変動、金利変動などの相場変動等による損失の可能性を減殺することを目的として、デリバティブ取引をヘッジ手段として用いる取引をいいます。
ヘッジ会計の意義
ヘッジ会計とは、ヘッジ取引のうち一定の要件を充たすものについて、ヘッジ対象に係る損益とヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し、ヘッジの効果を会計に反映させるための特殊な会計処理をいいます。
ヘッジ対象
ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象は、相場変動等による損失の可能性がある資産または負債で、
- 当該資産または負債に係る相場変動等が評価に反映されないもの
- 相場変動等が評価に反映されているが評価差額が損益として処理されていないもの
- 当該資産または、負債に係るキャッシュ・フローが固定されその変動が回避されるものである
- 主要な取引条件が合理的に予測可能であり、かつ、実行される可能性が極めて高い予定取引により、発生が見込まれる資産または負債も含まれる
ヘッジ会計の方法
ヘッジ会計の方法には繰延ヘッジと時価ヘッジとがあります。繰延ヘッジとは、時価評価されているヘッジ手段に係る損益を、ヘッジ対象の決済などによってその損益が確定するまで純資産の部に繰り延べる方法をいいます。時価ヘッジとは、決済などが行われるまで損益が確定しないヘッジ対象を時価評価し、その評価損益をヘッジ手段に係る損益が認識される会計期間に繰り上げて認識する方法をいいます。なお、金融商品に関する会計基準では、繰延ヘッジが原則とされています。
棚卸資産
棚卸資産の種類
棚卸資産とは生産・販売そして管理活動を通じて、収益を得る目的で消費される資産であり、次の4つのグループに分類されます。
① | 通常の営業過程において販売するために保有する財貨または用役 | → | 商品・製品 |
② | 販売を目的として現に製造中の財貨または用役 | → | 仕掛品・半製品 |
③ | 販売目的の財貨または用役を生産するために短期間に消費されるべき財貨 | → | 原材料品 |
④ | 販売活動及び一般管理活動において短期間に消費されるべき財貨 | → | 事務用消耗品などの貯蔵品 |
※棚卸資産(完成品と未完成品)の区別
完成品 | 商品:他社から仕入れた財 |
製品:自社で生産した財 | |
未完成品 | 仕掛品:製造途中にあるもので、その状態では販売不可能な財 |
半製品:製造途中にあるもので、その状態で販売可能な財 |
棚卸資産の取得原価
①購入による場合
購入代価に付随費用の一部または全部を加算することにより算定されます。
取得原価=購入代価+付随費用 |
②製造による場合
適正な原価計算基準にしたがって算定しなければなりません。
棚卸資産の原価配分
適正な期間損益計算を行うためには、売上高に棚卸資産の取得原価を合理的に対応させることが必要です。そのためには、販売によって払い出された金額(売上原価)と未だ払い出されていない金額(在庫)に配分しなければなりません。販売された部分と期末の在庫になる部分とに分割するためには、期中において払い出された数量と単価を把握する必要があります。
①数量の計算
・継続記録法
棚卸資産の種類別に帳簿を設け、受払いの都度これに記録する方法です。帳簿上、常に残高が示され、在庫数量を管理することができます。
(前期繰越数量+当期受入数量)― 当期払出数量 = 次期繰越数量 |
・定期棚卸法
前期繰越数量と当期受入数量だけを記録しておき、残高を実地調査して前期繰越数量と当期受入数量の合計から期末の実地棚卸数量を差し引いたものを払出数量とみなす方法です。
(前期繰越数量+当期受入数量)ー次期繰越実地棚卸数量=当期払出数量 |
②単価の計算
・個別法
取得原価の異なる個々の棚卸資産を区別して記録し、払出時にはその個々の実際原価を払出単価とする方法です。
・先入先出法(First-In, First-Out Method:FIFO)
先に受け入れた棚卸資産から先に払い出していくという仮定のもとで記録する方法です。
長所 | 棚卸資産の貸借対照表価額は、その資産の期末の時価に近い価額で評価されることになる |
短所 | 保有損益が売上総利益の中の算入されることになる。 |
・後入先出法(Last-In, First-Out Method:LIFO)
先入先出法とは反対に、最近受け入れた棚卸資産を先に払い出すという仮定のもとで記録する方法です。
長所 | 保有損益を売上総利益から排除するのに役立つ。 |
短所 | 物価変動時には棚卸資産の貸借対照表価額は、その資産の期末の時価とかけ離れたものになってしまう。 |
・平均原価法
受け入れた棚卸資産の取得原価を平均して払出単価を求める方法です。この方法には移動平均法と総平均法があります。
:移動平均法
新たな棚卸資産を受け入れる度に、平均単価を算出し直し、その平均単価によって次の払い出しを記録する方法です。
長所 | 期末にならなくても平均単価を把握することができる。 |
短所 | 払出の都度、平均単価を算出しなければならないという計算手続上の不便さがある。 |
:総平均法
一定期間に受け入れた棚卸資産の合計金額を、その数量の合計で除して平均単価を求める方法です。
長所 | 一定期間の平均単価の計算が1回で済み、払出単価を均一にするという効果をもつ。 |
短所 | 払出単価が一定期間後でなければ確定しないという不便さがある。 |
・売価還元法
期末に売価によって実地棚卸高を求め、これに原価率を乗じて期末の棚卸高を逆算する方法です。取り扱い品種の多い小売業などで用いられる方法です。
・最終仕入原価法
期末に最も近い最終の購入価額をもって、期末棚卸品のすべてを評価する方法です。
※「棚卸資産の評価に関する会計基準」の改正により、企業が選択可能な棚卸資産の評価方法の範囲は、個別法、先入先出法、平均原価法(移動平均法、総平均法)及び売価還元法に限定され、後入先出法の採用が認められないことになったいます。
③先入先出法と後入先出法の比較
先入先出法 | 後入先出法 | |
物の流れと原価の流れ | 多くの場合一致する | 多くの場合一致しない |
収益と費用との関係 | 古い単価が費用となり、 新しい収益に対応 | 新しい単価が費用となり、 新しい収益に対応 |
保有損益の取り扱い | 利益計算に混入 | 利益計算から排除 |
棚卸資産価額 | 新しい単価で評価 | 古い単価せ評価 |
棚卸資産の評価
①棚卸資産の評価基準
通常の販売目的(販売するための製造目的含む)で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とします。これは、収益性の低下による簿価の切下げという考え方に基づくものであり、実質的には期末棚卸資産の評価基準に低価基準を適用したものといえます。なお、取得原価と当該棚卸資産の評価基準売却価額との差額は当期の費用として処理されます。
・棚卸資産の評価基準における時価
棚卸資産の時価には、正味売却価額と再調達原価があります。なお、収益性の低下に基づく簿価切下げの判断に当たり原価と比較される時価は、正味売却価額です。ただし、製造業における原材料等のように、再調達原価の方が把握しやすく、それが正味売却価額と歩調を合わせて動くと想定される場合には、継続適用を条件として再調達原価によることができます。
・簿価切下げにより時価で評価した場合のその後の会計処理
切放法と洗替法のうち、継続適用を条件に棚卸資産の種類ごとに選択適用することができます。また、売価の下落要因を区分把握できる場合には、簿価切下げの要因ごとに選択適用できます。
②棚卸資産の減耗
棚卸資産の減耗とは、帳簿上の数量よりも実際の数量が少ない場合の差異のことであり、現実には、紛失や盗難によって生じます。棚卸資産の減耗のうち、原価性があると考えられる場合、売上高に対応させることが合理的なので、売上原価あるいは販売費に計上します。
一方、臨時的あるいは異常な数量の減耗が生じた場合には、原価性が認められないため、特別損失として計上します。ただし、金額が僅少な場合には、重要性の判断により、営業外費用として計上することもできます。
③評価損・減耗損の表示
評価損及び減耗損の損益計算書上の表示区分と表示科目は以下のとおりです。
表示区分 | 表示科目(例:商品) | ||
評価損 | 下記以外 臨時的事象かつ多額 | 売上原価※ 特別損失 | 商品評価損 |
減耗損 | 原価性あり 原価性なし | 売上原価※ または販管費 営業外費用または特別損失 | 商品減耗損 |
※棚卸資産の製造に関連する原材料等の評価損や減耗損は、製造原価として処理されます。
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