有価証券報告書って何?見るべきポイントは?初心者が押さえておきたい部分を説明!

基本編
  1. 有価証券を提出する義務がある企業とは?
        1. 上場企業
        2. 過去に公募増資などで有価証券届出書を提出した企業
        3. 株主数が多い企業
  2. 有価証券報告書はどこで手に入れるのか?
        1. 有料データサービスから入手
        2. 各企業のホームページから入手
        3. EDINET
  3. 有価証券にはどんなことが書いてあるのか?
    1. 第一部 企業情報
      1. 第1 企業の概況 
          1. 1.主要な経営指標などの推移
          2. 2.沿革
          3. 3.事業の内容
          4. 4.関係会社の状況
          5. 5.従業員の状況
      2. 第2 事業の状況
          1. 1.業績等の概要
          2. 2.生産、受注及び販売の状況
          3. 3.対処すべき課題
          4. 4.事業等のリスク
          5. 5.経営上の重要な契約等
          6. 6.研究開発活動
          7. 7.財政状態及び経営成績の分析
      3. 第3 設備の状況
          1. 1.設備投資等の概要
          2. 2.主要な設備の状況
          3. 3.設備の新設、除却等の計画
      4. 第4 提出会社の状況
          1. 1.株式等の状況
          2. 2.自己株式の取得等の状況
          3. 3.配当政策
          4. 4.株価の推移
          5. 5.役員の状況
          6. 6.コーポレートガバナンスの状況
      5. 第5 経理の状況
          1. 1.連結財務諸表
          2. 2.主な資産および負債の内容
      6. 第6 提出企業の株式事務の概要
      7. 第7 提出企業の参考情報
          1. 1.提出企業の親会社等の情報
          2. 2.その他の参考情報
    2. 第二部 提出会社の保証会社等の情報
          1. 監査報告書
          2. 内部統制報告書
          3. 確認書
  4. 「沿革」で見るべきポイントは?
      1. 創業時期を確認しましょう
      2. 上場時期を確認しましょう
      3. M&A情報を確認しましょう
  5. 「事業の内容」で見るべきポイントは?
      1. 事業区分、会社名を確認しましょう
      2. セグメント情報と関連付けて見てみましょう
  6. 「関係会社の状況」で見るべきポイントは?
      1. 名称や主要な事業内容を確認しましょう
      2. 関係内容を確認しましょう
  7. 「生産、受注及び販売の状況」で見るべきポイントは?
      1. 主な売上の相手先を確認しましょう
      2. 売掛金・受取手形の上位の相手先を確認しましょう
  8. 「生産、受注及び販売の状況」の「受注実績」で見るべきポイントは?
      1. 受注高及び受注残高を確認しましょう
      2. 建設業の場合は受注残高(手持ち工事高)の内訳を確認しましょう
  9. 「対処すべき課題」&「事業等のリスク」で見るべきポイントは?
      1. 「対処すべき課題」では、過去の問題点、今後の事業展開上の課題を読み取りましょう
      2. 「事業等のリスク」では、リスクの項目を確認しましょう
  10. 「主要な設備の状況」の見るべきポイントは?
      1. 本社や工場・店舗の所在地を確認しましょう
      2. グローバルな展開に注目しましょう
      3. 帳簿価格や従業員数を確認しましょう
  11. 「株式等の状況」で見るべきポイントは?
      1. 大株主の氏名又は名称を確認しましょう
      2. 「所有者別状況」の区分を確認しましょう
  12. 「役員の状況」及び「大株主の状況」で見るべきポイントは?
      1. 役員の所有株式数を確認しましょう
      2. 「大株主の状況」に役員の名前が記載されているか確認しましょう
  13. 「配当政策」で見るべきポイントは?
      1. 実際の配当額を確認しましょう
      2. 配当目標を確認しましょう
  14. 「主な資産および負債の内容」で見るべきポイントは?
      1. 借入金額の最も大きい銀行を確認しましょう
      2. 「大株主の状況」に銀行名が記載れていないかどうか確認しましょう
  15. 「研究開発活動」で見るべきポイントは?
      1. どんな事業や製品に研究開発費を投じているのかを確認しましょう
      2. 「事業の種類別セグメント情報」と関連付けて見ましょう
      3. 対売上比率にも注目しよう
  16. 「設備投資の新設、除去の計画」で見るべきポイントは?
      1. 事業別の投資予定額を確認しましょう
      2. 所要資金の調達方法を確認しましょう
      3. 「重要な設備の売却等」における除去・売却予定の資産の有無を確認しましょう
  17. 「有形固定資産明細表」の見るべきポイントは?
      1. 「有形固定資産明細表」の資産の増減内容を確認しましょう
  18. 「経営上の重要な契約等」で見るべきポイントは?
      1. 契約の相手先を確認しましょう
      2. 契約機関を確認しましょう
      3. 契約条件を確認しましょう
  19. 「株価の推移」で見るべきポイントは?
      1. 過去の株価のトレンドを掴みましょう
      2. 業績との関連性を確認しましょう
  20. 「発行済株式総数、資本金等の推移」及び「社債明細表、借入金明細表」で見るべきポイントは?
      1. 「発行済株式総数、資本金等の推移」の資本金増加額及び資本準備金増加額の合計額を確認しましょう
      2. 「社債明細表」、「借入金明細表」の利率を確認しましょう
  21. 株式の希薄化とは?
  22. 「従業員の状況」で見るべきポイントは?
      1. 事業の種類別の人数を確認しましょう
      2. 平均年齢や平均勤務年数を確認しましょう
      3. 平均年間給与の金額を同業他社と比較しましょう
      4. 親会社の人数を確認しましょう
      5. 労働組合の有無を確認しましょう
      6. 特別な記載内容を確認しましょう
  23. 労働組合とは?
        1. 労働組合を結成するメリット
  24. 「新株予約権の状況」および「ストックオプション制度の内容」で見るべきポイントは?
      1. 「新株予約権の状況」では、権利行使価格、行使期間、株式数を確認しましょう
      2. 「ストックオプション制度の内容」では、対象者、人数を確認しましょう
  25. ストックオプションとは?
    1. 関連

有価証券を提出する義務がある企業とは?

上場企業

金融商品取引所に上場している

過去に公募増資などで有価証券届出書を提出した企業

募集または売り出しにあたり有価証券届出書または発行登録追補書類を提出した有価証券を発行した企業

株主数が多い企業

所有者数が1000人以上の株券または優先出資証券、および所有者数500人以上のみなし有価証券を発行している企業

有価証券報告書はどこで手に入れるのか?

有価証券の入手法は

  1. 有料データサービスから入手
  2. 各企業のホームページから入手
  3. EDINETから入手
有料データサービスから入手

有料データサービスは過去20年以上の有価証券報告書だけでなく決算短信などの企業の開示情報を見ることが出来るので、使い勝手はいいのですが、一定の利用料がかかるため、金融機関などの専門業者が使用することが多いようです。

各企業のホームページから入手

上場企業のホームページには「投資家向け情報」や「IR情報」といった項目が必ずあります。ここから直接、決算短信や決算説明会用資料がPDFでダウンロードできるようになっています。

EDINET

EDINET(エディネット)は「金融商品取引法に基づく有価証券報告書の開示書類に関する電子開示システム」のことで、提出された開示書類について、インターネット上においても閲覧可能とするものです。
有価証券報告書だけでなく、四半期報告書、半期報告書、臨時報告書、大量保有報告書などの開示書類も閲覧可能です。無料で見ることが出来ます。

有価証券にはどんなことが書いてあるのか?

有価証券には多くの情報が記載されている。
大まかに全様を説明します。

第一部 企業情報

第1 企業の概況 

1.主要な経営指標などの推移

過去5年間の業績の推移が記載されています。

2.沿革

創業から現在までの企業の歴史が記載されています。
いつ上場したか、合併しているのかなども分かります。

3.事業の内容

企業が取り組んでいる事業の内容が記載されています。

4.関係会社の状況

重要な連結子会社や関連会社が記載されています。
ここでは、意外な企業が傘下に入っていることが分かるので面白いですね。

5.従業員の状況

従業員数・平均年齢や平均給与などが記載されています。
気になる有名企業の年収もこれで分かりますね。

第2 事業の状況

1.業績等の概要

1年間の業績の内容を詳細に決算数値と関連させて詳細に説明しています。

2.生産、受注及び販売の状況

1年間の生産・受注・販売実績や受注残高が記載されています。

3.対処すべき課題

企業が自己分析している事業上の課題が記載されています。

4.事業等のリスク

企業の自己分析している事業上のリスクが記載されています。

5.経営上の重要な契約等

事業運営上の重要な契約内容が記載されています。

6.研究開発活動

研究開発の目的・課題・成果や開発金額が記載されています。
新商品の開発情報が見ることができます。

7.財政状態及び経営成績の分析

会社としての分析・検討内容を詳細に説明しています。

第3 設備の状況

1.設備投資等の概要

1年間に行った設備投資の内容が記載されています。

2.主要な設備の状況

本社・支店・工場・店舗の場所や投資額・従業員数等が記載されています。
国外にある情報も記載されています。

3.設備の新設、除却等の計画

今後の投資計画に関する情報が記載されています。

第4 提出会社の状況

1.株式等の状況

株主の属性や大株主の内訳、ストックオプションの条件等が記載されています。
株主が分かると親会社の存在や、役員が株を持っているかなどが分かります。

2.自己株式の取得等の状況

企業の1年間+有価証券提出までの期間における自己株式の取得状況が記載されています。

3.配当政策

企業の配当回数の方針や配当額決定の考え方が記載されています。

4.株価の推移

最近5年間の株価の動きが記載されています。

5.役員の状況

取締役・監査役の略歴が記載されています。

6.コーポレートガバナンスの状況

取締役会・監査役会の会社機関の内容だけでなく、役員報酬についても記載されています。
役員の給料が分かるわけです。

第5 経理の状況

1.連結財務諸表

連結財務諸表が記載されています。

2.主な資産および負債の内容

重要な資産・負債の残高上位の相手先が記載されています。
企業の重要な取引先はどこか分かります。リストラの実施状況や今後の計画が記載されています。

第6 提出企業の株式事務の概要

株式事務の取扱場所や手数料等が記載されています。

第7 提出企業の参考情報

1.提出企業の親会社等の情報

親会社名が記載されています。

2.その他の参考情報

有価証券や四半期報告書の提出日が記載されています。

第二部 提出会社の保証会社等の情報

保証の対象となっている社債等がある場合には保証会社名等が記載されています。

監査報告書

監査をしている監査法人、公認会計士の名称や監査意見の内容がわかります。

内部統制報告書

平成21年3月期決算の企業から適用になったJ-SOX制度に関する企業の報告書です。

確認書

有価証券が適正に記載されていることを企業の代表が確認する書類です。

「沿革」で見るべきポイントは?

創業時期を確認しましょう

個人事業から始めているケース、昔の有限会社が起点となっているケース、最初から株式会社で事業を始めているケースがあります。事業の出発点が分かります。

上場時期を確認しましょう

創業から短期間で上場しているケース、創業から何十年も経ってから上場しているケース、最初から東京証券取引所マザーズ市場や大阪証券取引所ヘラクレス市場といった新興市場に上場しているケース、いきなり東京証券取引所第一部や第二部に上場しているケースがありますので、上場までのプロセスが分かります。

M&A情報を確認しましょう

上場後は他社の買収を積極的に行うケースや、事業展開に行き詰まり、他社の資本傘下に入るケースがありますので、他社との力関係が分かります。

「事業の内容」で見るべきポイントは?

事業区分、会社名を確認しましょう

事業区分では子会社・関連会社も含めて連結ベースで取り組んでいる事業内容が記載されていますので、一般的に会社名から連想される事業以外にも手掛けている全ての事業について網羅的に理解することが出来ます。
また、売上の対象となっている製品・商品や店舗の名称だけでなく、事業を運営する会社名も記載されていますので、どの会社でどんな事業を行っているのかが分かります。

セグメント情報と関連付けて見てみましょう

「事業の内容」と記載されている事業区分は「事業の種類別セグメント情報」の事業区分と一致していますので、両者をアさせてみることで、事業内容の理解でだけでなく、事業別の採算性も読み取ることが出来ます。

「関係会社の状況」で見るべきポイントは?

名称や主要な事業内容を確認しましょう

主要な関係会社とその会社が行っている事業内容が記載されていますので、どんな関係会社があり、どんな事業に取り組んでいるのかが分かります。

関係内容を確認しましょう

親会社と各関連会社との間の役員の兼任状況や営業上の取引内容が記載されていますので、親子間の結びつきの強さがわかります。

「生産、受注及び販売の状況」で見るべきポイントは?

主な売上の相手先を確認しましょう

「販売実績」には、事業の種類別の売上高が記載されていますが、ポイントは主な売上の相手先の記載があるかどうかです。
売上に占める割合が10%を超えている場合は開示が求められていますが、中には30%、40%といった会社もあります。
その場合は、相手先への依存度が高い事になり、相手先の経営状況の影響を受けるという点に注意が必要です。

売掛金・受取手形の上位の相手先を確認しましょう

「主な資産お飛び負債の内容」の売掛金・受取手形に記載されている相手先名と販売実績に記載されている相手先名を見ることで意外なことがわかる場合があります。売掛金が回収できていない時は注意が必要です。
売掛金の回転期間は簡便的に以下の式で計算することができます。月平均売上高の何か月分が売掛金として残っているかを示す指標です。

期末売掛金残高÷(年間売上高÷12カ月) = 売掛金の回転期間

「生産、受注及び販売の状況」の「受注実績」で見るべきポイントは?

受注高及び受注残高を確認しましょう

1年間に受注した金額及び期末時点の受注残高が記載されていますので、次年度以降の確定した売上がどの程度あるか知ることができます。

建設業の場合は受注残高(手持ち工事高)の内訳を確認しましょう

大型プロジェクトのような受注~回収までのスパンが長い事業を中心にしている会社は、プロジェクトの完成予定時期を見ることによって、その売上が計上される時期を推測することが出来ます。

「対処すべき課題」&「事業等のリスク」で見るべきポイントは?

「対処すべき課題」では、過去の問題点、今後の事業展開上の課題を読み取りましょう

過去に発生した不祥事に対して、どのように対処して、現在はどのような体制をとっているかが記載されているケースもあります。
また、今後どのようなサービスを展開していくかが記載されているケースもあります。

「事業等のリスク」では、リスクの項目を確認しましょう

記載内容や分量は会社によって様々ですが、リスクの項目は列挙されていますので、興味を引く項目があれば、内容を細かく見てみると良いでしょう。

「主要な設備の状況」の見るべきポイントは?

本社や工場・店舗の所在地を確認しましょう

会社がどの場所を起点に、どこの地域に注力して事業展開しているかを知ることが出来ます。日本を代表する企業になっても本社所在地は創業時のままという会社は少なくありませんし、出店地域が偏っている場合もありますので、意外な情報が入手できることがあります。

グローバルな展開に注目しましょう

「主要な設備の状況」には国内だけでなく、国外の店舗や施設、また、在外子会社とそのテンポ・施設を記載している例も少なくありません。国内のビジネス展開だけでは済まなくなってきた昨今、その国・地域に店舗や工場などを展開しているのかを知る事も重要です。

帳簿価格や従業員数を確認しましょう

各拠点の建物・土地等の固定資産の帳簿価格や従業員数が記載されていますので、どのくらいの事業規模なのか知ることが出来ます。

「株式等の状況」で見るべきポイントは?

大株主の氏名又は名称を確認しましょう

「大株主の状況」には持株数の多い順に上位10名の氏名又は名称が記載されていますので、どんな会社や人物が上位株主にいるのか知ることが出来ます。

「所有者別状況」の区分を確認しましょう

「所有者別状況」には、区分別(政府関係、金融機関、金融業者、その他法人、外国法人、個人その他)に株主数、株式数、割合が記載されていますが、特に外国法人、個人その他の項目を見ることで、外国人投資家や個人投資家に人気のある会社なのかを知ることができます。

「役員の状況」及び「大株主の状況」で見るべきポイントは?

役員の所有株式数を確認しましょう

役員の中で誰が最も多く会社の株を所有しているか知ることで、取締役間のパワーバランスを推測する事も出来ます。

「大株主の状況」に役員の名前が記載されているか確認しましょう

ある役員が「大株主の状況」に記載されるほどの株式数を所有していれば、相当の発言権があることになりますし、役員以外の別の人物が大株主になっていれば、役員よりもその個人株主の方が会社に影響力があるのかもしれません。

「配当政策」で見るべきポイントは?

実際の配当額を確認しましょう

有価証券報告書提出日までの1年間で行った配当実績が記載されていますので、どのくらいの規模の配当があったかを知ることが出来ます。

配当目標を確認しましょう

1株当たりの年間〇〇円という記載があれば、利益の大小にかかわらず安定配当を目指していることがわかりますし、配当性向〇〇%や株主配当率〇〇%という記載があれば、利益連動型の配当を目指していることが分かります。

「主な資産および負債の内容」で見るべきポイントは?

借入金額の最も大きい銀行を確認しましょう

短期借入金と長期借入金の合計額が最も大きい銀行が会社のメインバンクと言えるでしょう。

「大株主の状況」に銀行名が記載れていないかどうか確認しましょう

借入金も多く大株主にもなっている銀行がある場合には、単なる資金的な関係にとどまらず事業上の結びつきも強いと言えるかもしれません。

「研究開発活動」で見るべきポイントは?

どんな事業や製品に研究開発費を投じているのかを確認しましょう

研究開発にかけている金額だけでなく研究開発の対象となっている事業や製品を読み取ることで、現在の主力製品にさらに力を入れてくのか、新製品の開発に力を入れていくのかといった情報を知ることが出来ます。

「事業の種類別セグメント情報」と関連付けて見ましょう

「事業の種類別セグメント情報」には事業の種類別に売上金額が記載されていますので、研究開発費の対売上比率を計算することによって、今後どの事業に力を入れていくのかを予想することが出来ます。

対売上比率にも注目しよう

対売上比率については、前年や前々年の数値と比較することで、会社の方針転換も見えてくるかもしれません。

「設備投資の新設、除去の計画」で見るべきポイントは?

事業別の投資予定額を確認しましょう

どうな事業にいくらの投資を予定しているのかを知る事で、各事業に対する今後の取り組みが予想できます。

所要資金の調達方法を確認しましょう

自己資金だけで対応するのか借入にも依存しるのかを知る事で、会社の財務状況が予想できます。

「重要な設備の売却等」における除去・売却予定の資産の有無を確認しましょう

次期以降に除去や売却を予定している重要な設備については、その予定時期が記載されていますので、設備に関するリストラ計画を知ることが出来ます。

「有形固定資産明細表」の見るべきポイントは?

「有形固定資産明細表」の資産の増減内容を確認しましょう

需要な有形固定資産(資産合計の1%以上)の増減があった場合には、その内容を注記することになっていますので、減少内容を見ることによって設備に関するリストラの実施状況を伺うことが出来ます。

「経営上の重要な契約等」で見るべきポイントは?

契約の相手先を確認しましょう

契約の相手先が株主なのかどうか、海外法人なのかどうかを知ることで事業パートナーの属性などを知ることができます。

契約機関を確認しましょう

契約期間の有無や契約の更新条件を見ることで、契約終了となるリスクを知ることができ、会社に与えるインパクトを予想することが出来ます。

契約条件を確認しましょう

ロイヤリティーのように対価が発生する取引であれば、会社の損益に与える影響を知ることができます。

「株価の推移」で見るべきポイントは?

過去の株価のトレンドを掴みましょう

「株価の推移」には、過去5年間の年度別の最高株価・最低株価及び最近6ケ月別の最高株価・最低株価が記載されていますので、時系列で株価の推移を知ることが出来ます。

業績との関連性を確認しましょう

有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」には5年間の業績の推移が記載されていますので、株価と業績との関連性を知ることが出来ます。

「発行済株式総数、資本金等の推移」及び「社債明細表、借入金明細表」で見るべきポイントは?

「発行済株式総数、資本金等の推移」の資本金増加額及び資本準備金増加額の合計額を確認しましょう

(注)書きに「一般募集」、「公募」、「第三者割当」といった記載がある場合は、資本増加額と資本準備金増加額の合計が実際の資金調整額となります。

「社債明細表」、「借入金明細表」の利率を確認しましょう

利率の高低によって、金融機関からみた会社の信用力がわかり、今後の資金調達力を推測することが出来ます。同業他社との比較をすることで、その違いが明確になります。金利が低ければ、より優位ということです。

株式の希薄化とは?

企業が「増資」を実施すると、「株式の希薄化」が生じます。これは、「株式の価値が薄まる=下がる」という意味です。

具体例を挙げて説明しますと、

企業A社は以下の様な状態です。

  • 株価:50,000円
  • 発行済株式数:100,000株
  • 純利益:10億円
  • 純資産:50億円

つまり

1株当たりの純利益 → 10,000円 (=10億÷100,000株)
1株当たりの純資産 → 50,000円 (=50億÷100,000株)

ここで、1億円の増資を1株50,000円で実行したとします。
増資により純資産は1億円増えて合計51億円になり、発行済株式数2,000株増えて102,000株となります。

この場合、

1株当たりの純利益 → 9,803円 (=10億円÷102,000株) → 下がった
1株当たりの純資産 → 50,000円 (=51億÷102,000株) → 変化なし

以上が希薄化です。

1株当たりの純利益を下げないためには、純利益10億2千万円が必要です。つまり、1億円の増資によって、2千万円の利益を増やすことが出来れば、既存株主の株式価値は下がらないことになります。

「従業員の状況」で見るべきポイントは?

事業の種類別の人数を確認しましょう

どんな事業にどれだけの人が働いているのか見ることで、各事業の力の入れ具合が分かります。各事業の売上高と対比させてみることでより明確になるでしょう。なお、各事業の売上高は有価証券報告書の「生産、受注及び販売状況」の「販売実績」や「事業の種類別セグメント情報」に記載されています。

平均年齢や平均勤務年数を確認しましょう

社歴や業種によっても平均年齢は異なりますし、急激に採用を増やしている会社については、平均勤務年数は短くなります。これらの情報によって会社の様子を伺うこともできます。

平均年間給与の金額を同業他社と比較しましょう

業種によって給与水準はさまざまです。したがって、業界のライバル企業同士を比較することで、給与水準の高低が分かります。ただし、親会社単体での平均給与しかわかりませんので、注意が必要です。

親会社の人数を確認しましょう

平均給与を記載する対象は親会社の従業員だけです。親会社は子会社の株式を保有し、自らは直接事業をしないで管理業務だけを行っている場合、必要最低限の従業員だけが在籍し、ほとんど従業員は子会社にいる場合もあります。子会社も含めた連結グループ全体の平均給与を知りたい場合は、連結損益計算書の人件費を、連結会社に記載されている従業員数で割ることで概算することは出来ます。

労働組合の有無を確認しましょう

歴史の長い会社は労働組合がある会社も多いですが、中には組合が結成されていない会社もあります。組合があるということは労働者としての権利を経営者に主張できる環境にあるといえますし、複数の組合があれば、組合間の利害が対立することもあるかもしれません。

特別な記載内容を確認しましょう

大半の会社では「特に記載すべき事項はありません」や「労使関係は円満に推移しております」といった問題がない旨の内容になっていますが、中には特別な記載がある場合もありますので、注意してみましょう。

労働組合とは?

日本の場合、複数の労働者が組合結成に合意することによって労働組合を結成できます。労働組合の権利は憲法で保障されています。憲法で保障されている「労働三権」(団結権、団体交渉権、団体行動権)は、NPOや市民団体などでは認められておらず、労働組合のみに与えられた権利です。
一人では会社に要求できないことも大勢で集まれば、経営者に意見しやすくなるということです。

労働組合を結成するメリット
  • 組合員の不満・苦情などが会社側に伝えやすくなり、職場の風通しが良くなる。
  • 職場のルールや賃金・労働時間などを話し合いで決められるようになり、労働条件が改善される。
  • 不当な解雇や安易なリストラなどがなくなり、雇用が安定する。
  • 働きぶりが公正に評価され、納得して働ける職場環境に改善される。
  • 経営に関する情報が入りやすくなり、透明性が増す。
  • 倒産や企業売却なおのとき、身を守るため、大きな力になる。

「新株予約権の状況」および「ストックオプション制度の内容」で見るべきポイントは?

「新株予約権の状況」では、権利行使価格、行使期間、株式数を確認しましょう

ストックオプションを付与された人たちが「いつ」までに「いくら」で「どのくらい」の数の株式を購入できる権利を持っているのかを知ることができます。

「ストックオプション制度の内容」では、対象者、人数を確認しましょう

ストックオプションを付与された対象者が役員なのか従業員なのか、何人に付与されたのかを知ることができ、ストックオプションによる潜在的な利益額について、1人当たりの平均値を計算することができます。

ストックオプションとは?

ストックオプションとは「株式を安く買い、高く売ることができる権利」のことです。
株式を買う際の価格を固定することが出来ます。

たとえば、現在の株価が1,000円で、権利行使価格1,000円で1,000株のストックオプションを付与されたとします。
この時点で、株を買う必要はありません。1,000円で買える権利を付与されたので、自分が好きな時に1,000円で1,000株買う事が出来るわけです。

3年後に株価が5,000円になったとします。この時に1,000円で買う権利を行使して、5,000円ですぐに売却する形になります。そうすると、(5000-1000)×1,000株=4,000,000円の利益を得る事が出来ます。

ストックオプションは、株価が上がれば上がるほど利益が大きくなるため、役員や従業員のやる気向上に繋がりやすいです。その結果、企業の業績が伸びていきます。

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