貸借対照表を見ていく時に、各社で色々な記載があることに気づくのではないでしょうか。
有価証券の表示の違いって何だろう?
そんな疑問について記事にしていきたいと思います。
金融資産
金融資産の意義
現金預金、受取手形、売掛金及び貸付金等の金銭債権、株式その他の出資証券及び公社債等の有価証券ならびにデリバティブ取引(先物取引、先度取引、オプション取引、スワップ取引及びこれらに類似する取引)により生じる正味の債権等をいいます。
金融資産の評価基準の基本的な考え方
時価評価を基本としつつ、保有目的に応じた処理を定めます。
金融商品に関する会計基準における時価とは、公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配または指標その他の相場(以下市場価格という)に基づく価額をいいます。市場価格がない場合には、合理的に算定された価額を公正な評価額とする。なお、市場には、随時、売買・換金等を行うことができる取引システム等も含まれます。
債権の評価
基本的な考え方
債権の評価については、その貸借対照表価額は取得価額から貸倒見積高に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額でなければなりません。
ここでいう貸倒引当金とは、売上債権や貸付金について、次期以降回収不能(将来の損失)となる可能性が見込まれる場合、これに備えて設定される引当金をいいます。
貸倒見積高の算定
「金融商品に関する会計基準」では、原則として、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて債権を3つに分類し、各区分に応じた貸倒見積高の算定方法により貸倒見積高を算定します。
分類 | 定義 | 貸倒見積高を算定方法 |
一般債権 | 経営状態に重要な 問題が生じていない 債務者に対する債権 | 過去の貸倒実績率等合理的な基準による 貸倒見積高を算定する(貸倒実績率法) |
貸倒懸念債権 | 経営破綻に至っていない が、債務の弁済に重大な 問題が生じているかまた は生じる可能性の高い 債務者に対する債権 | 次のいずれかの方法によって算定する。 ・債権額から担保の処分見込額等を減額し、 その残額について合理的な見積もりによる 貸倒見積高を算定(財務内容評価方)。 ・将来キャッシュ・フローを合理的に 見積もり、当初の約定利子率で割引いた 現在価格と帳簿価額との差額を貸倒見積高 とする。(キャッシュ・フロー見積法)。 |
破産更生債権等 | 経営破綻または実質的 に経営破綻に陥ってい る債務者に対する債権 | 債権額から担保の処分見込額等を 減額し、その残額を貸倒見積高とする (財務内容評価法)。 |
有価証券
有価証券の分類(保有目的別分類)
分類 | 定義 |
売買目的有価証券 | 時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券 |
満期保有目的の債券 | 満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券 |
子会社株式及び 関連会社株式 | 支配力の行使を目的として保有する株式(子会社株式)と 影響力の行使を目的として保有する株式(関連会社株式) |
その他有価証券 | 売買目的有価証券、満期保有目的の債券、 子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券 |
有価証券の表示
有価証券の貸借対照表上の表示区分
有価証券の分類 | 貸借対照表上の表示区分 | 表示科目 | |
売買目的有価証券 | 流動資産 | 有価証券 | |
満期保有目的の債権 | 1年内償還予定 | 流動資産 | 有価証券 |
1年超償還予定 | 固定資産 | 投資有価証券 | |
子会社株式及び関連会社株式 | 固定資産 | 関係会社株式 | |
その他有価証券 | 固定資産 | 投資有価証券 |
売買損益の損益計算書上の表示区分
有価証券の分類 | 損益計算書上の表示区分 | 表示科目 | |
売買目的有価証券 | 営業外損益 | 有価証券売却損益 | |
満期保有目的の債権 | 1年内償還予定 | 営業外損益 | 有価証券売却損益 |
1年超償還予定 | 特別損益 | 投資有価証券売却損益 | |
子会社株式及び関連会社株式 | 特別損益 | 関係会社株式売却損益 | |
その他有価証券 | 特別損益 | 投資有価証券売却損益 |
有価証券の評価
分類 | 貸借対照表価額 | 評価差額 |
売買目的有価証券 | 時価 | 当期の損益 (営業外収益または営業外費用) |
満期保有目的の債権 | 取得原価 | ー |
償却原価 | 当期の損益 (営業外収益または営業外費用) | |
子会社・関連会社株式 | 取得原価 | ー |
その他有価証券 | 時価 | 評価益:純資産の部 評価損:純資産の部または営業外費用 |
売買目的有価証券
時価により評価し、評価差額を損益計算書に当期の損益として計上します。
売買目的の有価証券の評価差額は、売却が予定されており、また企業が保有している期間の財務活動の成果を表すため、実現損益に準ずる性格のものとして当期の損益に含めるものとします。
満期保有目的の債券
取得原価により評価します。ただし、債券を債券金額より低い価額または高い価額で取得した場合において、その差額が金利調整と認められる場合には償却原価法を適用しなければなりません。
なお、債券金額より低い価額で取得し、以後債券金額まで増額させる場合をアキュムレーションと呼び、債券金額よりも高い価額で取得し、以後債券金額まで減額させる場合をアモチゼーションと呼ぶことがあります。
子会社株式及び関連会社株式
取得原価により評価します。子会社株式及び関連会社株式は、事業に対する投資と同様の性格と考えられ、時価の変動が財務活動の成果を表すものではないため、取得原価により評価します。
その他有価証券
時価により評価する。その他有価証券は、その性格上ただちに売却や換金を行うものではないため、評価差額を当期の損益に反映されることは適切ではありません。したがって、原則的には純資産の部に計上します。
差額評価については洗替法に基づき、次のどちらかを選択適用できます。
- 差額評価(評価益及び評価損)の合計額を純資産の部に計上します。(全部純資産直入法)
- 時価が取得原価を上回る銘柄に係る評価差額(評価益)は純資産の部に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額(評価損)は当期の損失として処理します。(部分純資産直入法)原則として、全部純資産直入法を適用するが、継続適用を条件として部分純資産直入法を適用することもできます。なお、純資産の部に計上されるその他有価証券の評価差額については、税効果会計を適用しなければなりません。
時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券
取得原価により評価します。ただし、社債その他の債券については償却原価法により評価します。
減損処理
満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式ならびにその他有価証券のうち時価のあるもの(時価を把握することが極めて困難と認められる金融商品以外のもの)については、時価が著しく下落したときは回復する見込みがある場合を除き、時価により評価し、評価差額を当期の損失(特別損失)として処理しなければなりません(強制評価減)。
また、時価のない(時価を把握することが極めて困難と認められる)株式については、発行会社の財政状態の悪化により、実質価額が著しく低下したときは、相当の減額をなし、評価差額を当期の損失(特別損失)として処理しなければなりません(実価法)。
なお、これらの場合には、当該時価及び実質価額を翌期首の取得原価とします(切放法の適用)。
評価差額のその後の会計処理方法
評価差額のその後の会計処理方法は、売買目的有価証券については洗替法と切放法の選択適用が認められており、その他有価証券については洗替法のみ認められています。
洗替法
洗替法とは、期末に時価評価した金額を翌期首に元の金額、すなわち帳簿価額(取得原価)に戻す会計処理方法です。したがって、当期末において時価と比較される金額は、帳簿価額(取得原価)となります。
切放法
切放法とは、期末に時価評価した金額を翌期首に帳簿価額(取得原価)に戻さず、時価評価した金額をそのまま翌期の帳簿価額として会計処理する方法です。したがって、当期末において時価と比較される金額は、前期末の時価となります。
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