決算書上には読み飛ばしている項目も多くあると思います。
これってあまり企業評価には重要ではないかな。優先度は低いし後回し。
いよいよ理解を深めるタイミングが来たかもしれません。
減損会計
減損会計の概要
時間の経過や使用状況などによって、固定資産の収益性が予想以上に大きく低下し、帳簿価額を回収できなくなった状態を減損といい、固定資産の収益性の低下を帳簿価額に反映させ、損失を将来の期間に繰り延べないための会計処理を減損会計といいます。
なお、減損会計は、時価と帳簿価額の差額を損益として認識する時価会計ではなく、将来の収益から回収不能となった金額を損失として認識する原価基準の枠内で行われる会計処理方法です。
減損会計の対象
有形固定資産(土地、建物、機械など)及び無形固定資産(のれんなど)ならびに投資その他の資産(投資不動産など)が該当します。つまり固定資産が対象となります。ただし、有価証券のように他の会計基準で減損処理を規定しているものは、減損会計の適用対象外となります。
減損会計の手続
減損会計の手続は、①減損の判定単位の特定、②減損の兆候の判定、③減損損失の認識の要否の判定、④減損損失の金額の測定、⑤減損損失の各資産への配分という段階を経て行われます。
①減損の判定単位の特定
複数の資産が一体となって独立したキャッシュ・フローを生み出す場合には、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定に際して、合理的な範囲で資産のグルーピングを行う必要があります。資産のグルーピングに際しては、他の資産または資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位(例えば、工場敷地+建物+機械装置など)、すなわち現金生成単位で行うこととされています。
②減損の兆候の判定
減損の兆候とは、大まかに捉えれば、次の状況が生じているか、またはその見込みであることをいいまう。
- 資産または資産グループから生じる営業損益や営業CFが継続してマイナス
- 資産の遊休や予定外の転用など、回収可能価額を著しく低下させるような変化
- 経営環境の著しい悪化
- 資産または資産グループの市場価格が著しく(概ね50%)下落した場合
③減損損失の認識の要否の判定
減損の兆候がある場合に減損損失を認識するかどうかの判定は、資産グループの経済的残存耐用年数にわたる割引前将来キャッシュ・フローの合計額と帳簿価額を比較することにより行います。この結果、割引前将来キャッシュ・フロー総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識します。なお、割引前将来キャッシュ・フローの見積期間は、資産の経済的残存耐用年数または資産グループの中の主要な資産の経済的残存耐用年数と20年のいずれか短い方とされています。
帳簿価額>割引前将来キャッシュ・フローの総額→減損損失を認識する。下記④へ進む。
帳簿価額<割引前将来キャッシュ・フローの総額→減損損失を認識しない。貸借対照表価額は、帳簿価額のままとなる。
④減損損失の金額の測定
減損損失が認識された場合は、固定資産の「帳簿価額ー回収可能価額」の金額を減損損失(特別損失)として費用処理します。
- 回収可能価額=使用価値と正味売却価額のいすれか大きい金額
- 使用価値=将来キャッシュ・フローの割引現在価値合計
- 正味売却価額=売却時の時価ー処分費用見込額
⑤減損損失の各資産への配分
現金生成単位が複数の資産で構成されている場合、認識された減損損失額を合理的な基準に基づいて各資産に配分し、帳簿価額を減額します。
減損処理後の会計処理
減損処理を行った資産については、減損損失を控除した帳簿価額から、残存価額を控除し、その金額を、企業が採用している減価償却方法にしたがい、規則的かつ合理的に配分します。また、減損処理を行った資産について、その後に回収可能価額が回復したとしても、減損損失の戻入れは行いません。
繰延資産
意義・目的
「企業会計原則」において、「将来の期間に影響する特定の費用は、次期以後の期間に配分して処理するため、経過的に貸借対照表の資産の部に計上することができる」としています。これにより、発生した費用を資産として繰り延べ、効果が現れる期間の費用として配分することで費用と収益の対応が可能となり、適正な期間損益が算定されることになります。
このような資産を繰延資産といい、繰延資産として貸借対照表に計上するためには、次の要件を充たす必要があります。
① すでに対価の支払が完了しまたは支払義務が確定していること。 ② ①に対応する役務の提供を受けていること。 ③ 効果が将来にわたって発現するものと期待される費用であること。
繰延資産の内容
繰延資産については、会社計算規則では、繰延資産として計上することが適当であるものは繰延資産とする旨が規定されているだけで、該当項目は限定列挙されていません。そのため、企業会計基準委員会より、「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」が公表され、具体的な繰延資産の項目として、次の5つが規定されています。
科目 | 償却方法 | P/Lの表示区分 | |
① | 株式交付費 | 新株発行または自己株式の処分費用は、 原則として支出時に費用として処理。 ただし、繰延資産として計上した場合には、 3年以内に定額法により償却。 | 営業外費用 |
② | 社債発行費等 | 社債発行費は、原則として支出時に費用として処理。 ただし、繰延資産として計上した場合には、 社債の償還までの期間にわたり利息法により償却。 新株予約権の発行費も原則として支出時に費用として処理。 ただし、繰延資産として計上した場合には、 3年以内に定額法により償却。 | 営業外費用 |
③ | 創立費 | 原則として支出時に費用として処理。 ただし、繰延資産として計上した場合には、 5年以内に定額法により償却。 | 営業外費用 |
④ | 開業費 | 原則として支出時に費用として処理。 ただし、繰延資産として計上した場合には、 5年以内に定額法により償却。 | 営業外費用 |
⑤ | 開発費 | 原則として支出時に費用として処理。 ただし、繰延資産として計上した場合には、 5年以内に定額法により償却。 | 売上原価 または販管費 |
研究開発費
前項の繰延資産の開発費に類似した項目として研究開発費が挙げられます。
ここでいう、研究とは、新しい知識の発見を目的とした計画的な調査や探求を意味します。また、開発とは、新しい製品・サービス・生産方法についての計画や設計、または既存の製品・サービス・生産方法を著しく改良するための計画や設計として、研究成果その他の知識を具体化することをいいます。
このような研究開発活動にかかる人件費、原材料費、固定資産の減価償却費、間接費等の配賦額は、すべて研究開発費に含まれ、資産計上できず発生時に費用処理されます。
経過勘定
意義
一定の契約に従い、継続して役務の提供を受けたり、行ったりする場合に、役務提供の対価である現金の収支時点と収益・費用の認識時点のずれを調整するための勘定です。
前払費用
一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいいます。
未収収益
一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、すでに提供した役務に対していまだその対価の支払を受けていないものをいいます。
前受収益
一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価をいいます。
未払費用
一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、すでに提供された役務に対していまだその対価の支払が終わらないものをいいます。
損益計算との関係
貸借対照表上の分類 | 損益計算との関係 | |
前払費用 | 流動資産または投資その他の資産 | 当期の費用から除去 |
未収収益 | 流動資産 | 当期の収益として計上 |
前受収益 | 流動負債 | 当期の収益から除去 |
未払費用 | 流動負債 | 当期の費用として計上 |
※前払費用については、一年基準により流動資産と投資その他の資産に分類されることに注意します。
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