株主資本価値から株価を計算する手順
企業の価値を出すために、DCF法というものを使っています。
計算式で書くと難しく見えるので、手計算で出せるように難しい式を分解しました。
- 直近の当期純利益を調べる
- (当期純利益+減価償却費-設備投資費-運転資金の増減分)を計算する
- 出た数字に、成長率をかける
- 5年分繰り返す
- 6年目以降は一定とする
- それぞれを現在価値に割引く
- 来年~5年後、6年目以降の現在価値を全て合算する
- (現在価値の合計+現金同等物-有利子負債) = 株主資本価値
- 株主資本価値÷発行済み株式数=理論株価
言葉で説明されると、難しいですね。
図にすると、このようになります。
直近の当期純利益を調べる
当期純利益は調べるには、調べたい企業の決算短信や有価証券報告書の損益計算書の部分を見れば解ります。
具体的には、このあたりを見ます。
(当期純利益+減価償却費-設備投資費-運転資金の増減分)を計算する!
計算する前に、それぞれの項目の場所を確認します。
減価償却費と運転資金の増減分は、
運転資金の増減は、売上債権、棚卸資産、仕入債務から求められます。
売上債権が増える → 運転資金も増える
売上債権が減る → 運転資金も減る
棚卸資産が増える → 運転資金も増える
棚卸資産が減る → 運転資金も減る
仕入債務が増える → 運転資金は減る
仕入債務が減る → 運転資金は増える
今回のケースは、
売上債権は 1477増えた → 運転資金は 1477増えた
棚卸資産は 101減った → 運転資金は 101減った ⇒ 運転資金は 1279増えた
仕入債務は 97増えた → 運転資金は 97減った
となります。
設備投資費は、
以上で、知りたい情報がわかったので、計算します。
出た値を私はFCF(フリー・キャッシュフロー)と呼んでいます。
ちなみに、
FCFの捉え方は、分析する人により異なります。
FCFの捉え方は、分析する人により異なります!
「これが正解」っというものはないと考えています。経験を重ねながら研ぎ澄ませて下さい。
出た数字に成長率をかける
毎年、10%ずつ成長している とすると、
FCF × (1+10%) = 1年後のFCF
10% = 0.1 ですので、
FCF × (1+0.1) = FCF × 1.1 = 1年後のFCF
5年分繰り返す
「毎年で10%成長する」と言う事は、
今のFCF | FCF |
1年後のFCF | FCF × 1.1 ←1.1を 1回かける |
2年後のFCF | FCF × 1.1 × 1.1 ←1.1を 2回かける |
3年後のFCF | FCF × 1.1 × 1.1 × 1.1 ←1.1を 3回かける |
4年後のFCF | FCF × 1.1 × 1.1 × 1.1 × 1.1 ←1.1を 4回かける |
5年後のFCF | FCF × 1.1 × 1.1 × 1.1 × 1.1 × 1.1 ←1.1を 5回かける |
ちなみに、具体例で説明すると
今のFCFが 1000 である。 毎年10%で成長しています。
この場合は
今のFCF | FCF |
1年後のFCF | FCF × 1.1 = 1100 |
2年後のFCF | FCF × 1.1 × 1.1 = 1210 |
3年後のFCF | FCF × 1.1 × 1.1 × 1.1 = 1331 |
4年後のFCF | FCF × 1.1 × 1.1 × 1.1 × 1.1 = 1464 |
5年後のFCF | FCF × 1.1 × 1.1 × 1.1 × 1.1 × 1.1 = 1611 |
6年目以降は一定とする
この意味は、企業が無限に成長し続ける事は考えにくいため、6年目以降は「成長しない」という前提にしています。
計算としては、
5年後のFCF ÷ 割引率 = 6年目以降のFCF (=残存価値)
となります。
仮に、割引率を8%とすると、
1611 ÷ 8% = 20138
(補足: 8% = 0.08 のこと)
それぞれを現在価値に割引く
計算で出した将来のFCFを、現在の価値で理解するために割引率を使います。
1年後のFCFの 現在価値 | 1年後のFCF ÷ (1+割引率) |
---|---|
2年後のFCFの 現在価値 | 2年後のFCF ÷ (1+割引率) ÷ (1+割引率) |
3年後のFCFの 現在価値 | 3年後のFCF ÷ (1+割引率) ÷ (1+割引率) ÷ (1+割引率) |
4年後のFCFの 現在価値 | 4年後のFCF ÷ (1+割引率) ÷ (1+割引率) ÷ (1+割引率) ÷ (1+割引率) |
5年後のFCFの 現在価値 | 5年後のFCF ÷ (1+割引率) ÷ (1+割引率) ÷ (1+割引率) ÷ (1+割引率) ÷ (1+割引率) |
6年後以降のFCFの現在価値 | 6年後以降のFCF ÷ (1+割引率) ÷ (1+割引率) ÷ (1+割引率) ÷ (1+割引率) ÷ (1+割引率) ÷ (1+割引率) |
となります。
毎年の割引率は、7~10%を使用しています。
(正確に出すならWACCで出すのが一般的なようです)
仮に、毎年の割引率を8%、
1年後のFCF = 1100
2年後のFCF = 1210
3年後のFCF = 1331
4年後のFCF = 1464
5年後のFCF = 1611
6年後以降のFCF = 20138
とすると、
1年後のFCFの 現在価値 | 1100 ÷ 1.08 (←1.08で1回割る) | = 1019 |
---|---|---|
2年後のFCFの 現在価値 | 1210 ÷ 1.08 ÷ 1.08 (←1.08で2回割る) | = 1037 |
3年後のFCFの 現在価値 | 1331 ÷ 1.08 ÷ 1.08 ÷ 1.08 (←1.08で3回割る) | = 1056 |
4年後のFCFの 現在価値 | 1464 ÷ 1.08 ÷ 1.08 ÷ 1.08 ÷ 1.08 (←1.08で4回割る) | = 1076 |
5年後のFCFの 現在価値 | 1611 ÷ 1.08 ÷ 1.08 ÷ 1.08 ÷ 1.08 ÷ 1.08 (←1.08で5回割る) | = 1096 |
6年後以降のFCFの現在価値 | 20138 ÷ 1.08 ÷ 1.08 ÷ 1.08 ÷ 1.08 ÷ 1.08 ÷ 1.08 (←1.08で6回割る) | = 12690 |
となります。
1年後~5年後、6年目以降の現在価値を全て合算する
上記の例で計算するなら、
1019 + 1037 + 1056 + 1076 + 1096 + 12690 = 17974
となります。
(現在価値の合計+現金同等物-有利子負債) = 株主資本価値
現金同等物については、貸借対照表の資産欄に記載さえている内容を参考にします。
主な現金同等物には、
- 現金及び預金
- 有価証券
- 投資有価証券
- 賃貸用不動産
などを参考にしています。
有利子負債については、貸借対照表の負債欄に記載されている内容を参考にします。
主な有利子負債には、
- 短期借入金
- 長期借入金
- 社債
などを参考にしています。
以上を参考にして
(現在価値の合計+現金同等物の合計-有利子負債の合計) = 株主資本価値
となります。
株主資本価値 ÷ 発行済み株式数 = 理論株価
株主資本価値 ÷ 発行済み株式数 = 理論株価 を求めます。
発行済株式数は、有価証券の目次で、提出会社の状況 → 株式等の状況 を参考にしましょう。
以上が理論株価の計算になります。
なお、これはあくまでも著者の考えであり、絶対的に正しいものではございません!
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